映画の話をしたい(2024-10-04 金曜日)

映画が好きだ。ただ詳しくないし、脚本や演出の妙を論ずることもできない。数だってあまり見ていない。見るのは近々の邦画ばかりで、洋画は有名どころの作品さえ見ていない。でも、映画が好きだ。なぜ好きなのかは分からない。映画を好きな人になりたいだけなのかもしれない。

ということで、そんな曖昧な嗜好の骨組みに肉付けをして説得力を持たせるべく、往年の名作を観た。これもまた邦画であるが、「邦画」というより「日本映画」という言葉のほうがしっくり来る作品である。

江戸川乱歩原作で、三島由紀夫によって戯曲化された『黒蜥蜴』という作品だ。若かりし美輪明宏の美しさと、織り成す台詞の美しさを堪能していたら、終盤に一瞬だけ出演する三島由紀夫の存在感に全部持っていかれる、という作品だった。あまりにインパクトが強すぎる。カレー粉みたいだ。少量でもそれを入れたらもうカレー味になってしまう。

美輪明宏の存在感があったおかげで、映画の感想が三島由紀夫一色に染まらずに済んだ。そう考えると、美輪明宏は最適役であったと言える。

実は原作小説を読んでおらず、それどころかひと月前に初めて江戸川乱歩を読んだくらいだ。新潮文庫江戸川乱歩傑作選を買ったまま数ヶ月放置していて、気が向いたためようやく読み始めた。そうしたら、まぁ読みやすいこと。本を読むのにかなり時間がかかる自分でも、夢中になって読み進め、寝るのを忘れて夜中の3時くらいまでページを捲っていた。寝不足で翌日の活動に支障きたしまくりだったが、近年稀に見る充足感をおぼえた。

思えば、本を読むのが遅いくせに、小難しい新書や学術書を読んで、理解も進まず、あまり頭に入ってもこず、ただ「小難しい本を読んでいる自分」を楽しんでいるだけだった。それはもはや、趣味:読書ではなく、趣味:自分である。そんなことばかりだ。

私と同年代くらいで、読書趣味の人はきっと小学生の頃とかに『少年探偵 江戸川乱歩』を読んでいたのだと思うと、羨ましく思い、時間の不可逆性をひしひしと感じる。そのときの自分はそのときやりたいことをやっていたわけだから、後悔する必要も無いのだが、今後の自分を形作る幼少期の基盤として江戸川乱歩がいるのはカッコイイ。羨ましい。もう少年探偵という年齢でもないが、今からでも読んでみようと思う。

 

それにしても、三島由紀夫、凄かったな……